寿司といえば、日本人にとって身近な食べ物です。
なかでもマグロは定番のネタですが、本マグロ、ミナミマグロ、キハダマグロ、ビンチョウマグロの違いを、実際に食べ比べたことがある人は、それほど多くないのではないでしょうか。
私自身、寿司を食べるときに、普段からマグロばかりを選ぶわけではありません。
ただ、スシローで期間限定の赤シャリ企画と、マグロを主役にしたフェアが同時に開催されているのを見て、少し気になりました。
赤シャリと相性のよいネタとしてマグロが紹介され、さらに本マグロとミナミマグロの赤身、中トロ、大トロを比べられる6貫セットまで用意されていたからです。
それなら、本マグロとミナミマグロだけでなく、ビンチョウやキハダなども一緒に並べ、赤シャリでマグロの違いを比べてみたら面白いのではないか。
次に同じ企画が行われるのは、数か月後かもしれないし、来年かもしれません。
そんな期間限定性に、私はまんまと釣られてしまいました。
今回合わせたワインは、長野県東御市にあるリュードヴァンの「ピノ・ノワール クレール 2023」です。
**ブラン・ド・ノワール(黒ブドウから白ワインのように造る製法)**で仕込まれた一本。黒ブドウ品種のピノ・ノワールをやさしく搾ることで、淡い桜色と繊細な味わいを楽しめるロゼワインに仕上がっています。
赤シャリ、複数のマグロ、そして希少な国産ロゼワイン。
少し実験のような組み合わせを、実際に試してみました。
この記事のポイント
- スシローの期間限定赤シャリで、4種類のマグロを食べ比べ
- リュードヴァン「ピノ・ノワール クレール 2023」をペアリング
- ロゼの酸と果実味が、マグロのうま味や赤シャリのコクにどう作用したか
- 本マグロとミナミマグロの部位別の違いと、2貫110円ののどぐろを実食

赤シャリは、いつでも選べるわけではない
赤シャリとは、一般的に赤酢を使って仕上げた酢飯のことです。
普段よく目にする白い酢飯と比べて、ほんのり茶色や赤みを帯びています。
赤酢は酒粕を熟成させて造られることが多く、米酢を中心に仕上げた酢飯と比べると、酸味がまろやかで、コクやうま味を感じやすいのが特徴です。
江戸前寿司でも古くから使われ、特にマグロをはじめとする赤身魚との相性がよいとされてきました。
ただし、スシローでは通常、好きなときに赤シャリへ変更できるわけではありません。
今回の赤シャリは、期間中の寿司を赤シャリで提供する限定企画として実施されていました。
過去にも赤シャリを使ったフェアは開催されていますが、次にいつ同じ条件で食べられるかは分かりません。
普段とは違うシャリで、複数のマグロを一度に食べ比べられる。
今回の企画は、赤シャリそのものを試すだけでなく、マグロの魚種や部位の違いを確かめる機会としても魅力的でした。
実際に食べてみると、赤シャリは単に色が違うだけではありません。
酢の酸味が強く前に出るというより、シャリ自体に少し厚みが加わり、マグロのうま味と自然につながるように感じました。
14貫で税込1,900円。食べ比べ体験としてのお値打ち感
今回購入したのは、合計14貫です。
内容は次のとおりでした。
- 大切りびん長まぐろ 2貫
- 天然本鮪中落ち 2貫
- キハダマグロと漬けキハダの食べ比べ 2貫
- 本マグロとミナミマグロの食べ比べ 6貫
- 天然のどぐろの炙り 2貫
訪問時の価格は、合計で税込1,900円でした。
なかでも、本マグロとミナミマグロの赤身、中トロ、大トロを比べられる6貫セットは1,280円。
天然本鮪の中落ちや、のどぐろの炙りまで加えて、この価格です。
もちろん、回転寿司とカウンター寿司を単純に比較することはできません。
ネタの大きさや品質、職人の仕事、店の空間まで含めれば、そもそも別の体験です。
それでも、一般的な寿司店で本マグロとミナミマグロの赤身、中トロ、大トロを一度に注文し、さらにキハダ、ビンチョウ、中落ち、のどぐろまで揃えようとすれば、同じ価格帯で収まるとは考えにくいでしょう。
価格だけでなく、そもそも同じ日に、これだけの種類と部位を食べ比べられるとは限りません。
手頃な価格で、ここまで幅のある比較体験ができる。
それが、今回スシローを選んだ大きな理由です。
※商品内容と価格は2026年7月の訪問時点のものです。店舗や時期によって異なる場合があります。
5,500円のロゼワインを、なぜスシローの寿司に合わせたのか
今回は寿司をテイクアウトし、自宅で長野県東御市のリュードヴァン「ピノ・ノワール クレール 2023」と合わせました。
価格は税込5,500円。気軽に開ける一本ではありませんが、今回のマグロ食べ比べなら、その価値があると思ったのです。
購入したときから、何に合わせ、どのような場面で飲もうかと考えていました。
当初は、ワイン好きの友人と洋食を囲みながら、この一本を開けるつもりでした。
トマトを使った料理や甲殻類、チーズなども合いそうです。
ただ、その機会がいつ来るのかは分かりません。
それ以上に、私はクレール2023を早く飲んでみたかったのです。
どのような香りがあり、どのような味がするのか。
東御市でワイナリーの方から直接話を聞いたこともあり、ボトルを眺めるたびに、開けるタイミングを考えていました。
そこで思い出したのが、以前、フランス・ボルドーのロゼワインを、本マグロの赤身・中トロ・大トロの寿司に合わせたときの経験です。
そのとき、ロゼワインの酸や果実味が、本マグロのうま味や脂とよく合い、とても印象に残っていました。
今回の赤シャリとマグロの食べ比べなら、この貴重な一本を開けるに見合うだけの価値があるのではないか。
本マグロだけではなく、ミナミマグロ、キハダ、ビンチョウと、種類の異なるマグロにロゼがどのように作用するのか。
少し実験のようで面白そうです。
ブログの記事にもできるなら、5,500円のワインを開ける理由としては十分だと思いました。
リュードヴァン「ピノ・ノワール クレール 2023」

リュードヴァンは、長野県東御市にあるワイナリーです。
荒廃農地を開墾するところからブドウ栽培を始め、現在では東御市を代表するワイナリーの一つになっています。
東御市は、日照時間、水はけのよい斜面、昼夜の寒暖差など、ワイン用ブドウの栽培に適した環境に恵まれた地域として知られています。
クレール2023は、もともとスパークリングワイン用として用意されたピノ・ノワールを、スティルワイン(発泡しないワイン)として仕上げた一本です。
インターネット上では白ワインとして紹介されている場合もありますが、私がワイナリーの方から直接説明を受けた際には、ロゼワインとして案内されました。
色調を見ても、白ワインというより、淡いロゼと表現した方が実際の印象に近いと感じます。
グラスに注ぐと、まず目を引くのが、その美しい色合いです。
香りには華やかな果実のニュアンスがあり、口に含むと、きれいな酸と果実味、ほのかな樽の風味がバランスよく広がります。
軽いだけのロゼではありません。
ピノ・ノワールらしい繊細さがありながら、芯のある味わいを持っています。
個人的には、日本のロゼワインの中でもトップクラスだと感じている一本です。
世界的に評価の高いプロヴァンスやブルゴーニュ、ローヌのロゼと比べても、単に日本産だから高く評価しているわけではありません。
果実味、酸、樽のニュアンス、そして美しい色調。そのどれをとっても、完成度の高いロゼワインだと思います。
寿司にロゼワインを合わせる理由
寿司に合わせるお酒といえば、日本酒を思い浮かべる人が多いでしょう。
ワインなら、白ワインを選ぶ人が多いかもしれません。
しかし、マグロのように赤身のうま味と脂があるネタには、ロゼワインも面白い選択肢になります。
ロゼワインに対して、「甘いワイン」や「色を楽しむワイン」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
けれど実際には、食事に合わせやすい辛口のロゼも数多く造られています。
ロゼは、白ワインのような酸と軽やかさを持ちながら、赤ワインに近い果実味や厚みも備えています。
赤ワインほどタンニンが強くないため、生魚の風味や酢飯を邪魔しにくいのも魅力です。
軽い赤身には果実味が寄り添い、トロの脂には酸が働く。
一本で幅広いネタを受け止められることが、寿司とロゼの相性のよさだと思います。
マグロの種類と部位を食べ比べる

ここからは、実際に食べたマグロとクレール2023の相性を振り返ります。
同じマグロでも、魚種や部位によって、うま味、脂、食感は大きく異なりました。
大切りびん長まぐろ
ビンチョウは、身がやわらかく、味わいも比較的軽やかです。
クセが少なく、食べやすいマグロですが、今回のクレールと合わせると、ワインの果実味や厚みの方がやや強く感じられました。
相性が悪いわけではありませんが、寿司とワインが同じ強さで並ぶというより、ワインが少し前に出る組み合わせでした。
キハダマグロと漬けキハダ
キハダは、ビンチョウよりもうま味が強く、身の食感もしっかりしています。
赤シャリのコクとも自然になじみ、クレールの果実味にも負けません。
特に印象がよかったのが、漬けキハダです。
タレのうま味とマグロの味が重なり、ワインの酸と果実味が全体をまとめてくれます。
今回の食べ比べの中でも、漬けキハダとロゼは、かなり完成度の高い組み合わせでした。
本マグロの赤身
本マグロの赤身には、鉄分を思わせる独特の風味と、密度のあるうま味がありました。
身はしっかりしていますが、硬すぎません。
赤身らしい力強さと、上品さを併せ持っています。
クレールの酸が赤身のうま味を持ち上げ、果実味がマグロの風味に自然に重なります。
赤シャリ、本マグロの赤身、ロゼワイン。
三つの要素が、きれいにつながった組み合わせです。
天然本鮪の中落ち
中落ちは、見た目から想像した以上に、肉を思わせるような食感がありました。
ただし、味わい自体は意外に軽やかです。
赤シャリとの相性が非常によく、マグロのうま味をシャリのコクが下から支えているように感じました。
クレールを合わせてもバランスは崩れません。
果実味と酸が、中落ちのうま味に自然に寄り添います。
価格を考えても、満足度の高い一皿でした。
本マグロの中トロ
本マグロの中トロは、脂に品があります。
大トロほど脂が前面に出るわけではなく、赤身のうま味と脂の甘さがバランスよく感じられました。
クレールの酸が脂をさっぱりと流し、ほのかなタンニンが味わいに輪郭を与えます。
非常に相性はよかったのですが、この組み合わせを試しながら、軽めの赤ワインを合わせても面白いのではないかと感じました。
それだけ中トロ側にも、ワインを受け止める厚みがあります。
ミナミマグロの中トロ
ミナミマグロの中トロは、本マグロよりも脂の存在感が少し強く感じられました。
本マグロの中トロが上品で整った印象だとすれば、ミナミマグロは脂の甘さを、より分かりやすく楽しむタイプです。
クレールの酸が口の中を整えてくれるため、脂が重たく残りません。
マグロとワインを交互に楽しみやすい組み合わせでした。
本マグロの大トロ

今回、最も印象に残ったのが本マグロの大トロです。
私は普段、脂が強すぎると感じることが多く、積極的に大トロを選ぶ方ではありません。
しかし、今回の本マグロの大トロは、脂だけが前に出るのではなく、うま味が非常に強く感じられました。
口に入れるとほどよく溶け、濃厚なうま味が長く残ります。
中トロよりも大トロの方がおいしいと感じたのは、個人的には少し意外でした。
クレールを合わせると、ワインの酸が脂を切りながらも、マグロのうま味までは消しません。
脂を洗い流して終わるのではなく、うま味を残したまま、次の一口へつないでくれます。
今回のペアリングの中でも、特に完成度の高い組み合わせでした。
ミナミマグロの大トロ

ミナミマグロの大トロは、かなり脂が豊かです。
食べた瞬間、霜降りのレアな牛肉を思わせるような印象がありました。
本マグロと比べると、うま味の強さよりも、脂と食感を楽しむタイプに感じます。
本マグロの大トロの方が、口の中でより滑らかに溶け、うま味も強く残りました。
今回の印象を短く表現するなら、
「本マグロの大トロは、うま味がとろける。ミナミマグロの大トロは、脂と食感を楽しむ」
という違いです。
どちらが上というよりも、大トロでも魚種によって楽しみ方が異なることがよく分かりました。
2貫110円ののどぐろを、正直少し疑っていた

マグロと一緒に、期間限定の「天然のどぐろの炙り」も購入しました。
価格は2貫で110円。
正直に言うと、注文前は少し疑っていました。
のどぐろが2貫で110円なら、本当にのどぐろらしい味がするのだろうかと思ったからです。
しかし、実際に食べてみると、これが想像以上においしい。
白身魚らしい上品さがありながら、しっかりと脂が乗っています。
炙った香ばしさも加わり、口の中にうま味が広がりました。
わずかに塩味も感じられ、醤油を付けなくても十分に味が完成しています。
試しに醤油を付けると、魚本来の繊細な風味や、炙りの香りが少し隠れてしまいました。
個人的には、何も付けず、そのまま食べるのがおすすめです。
価格を考えると、かなり驚きのある一皿でした。
短期間の限定商品だったため、いつでも食べられるわけではありませんが、次回同じような企画があれば、ぜひ試してほしいネタです。
ロゼワインは、脂を流すだけではなかった
今回、マグロとロゼワインを合わせて改めて感じたのは、ワインの役割が、単に脂を流すことだけではないということです。
確かに、ロゼの酸は中トロや大トロの脂を軽くしてくれます。
しかし、それだけではありません。
赤身のうま味を引き立て、赤シャリの酸とコクをつなぎ、次の一貫を新鮮な気持ちで楽しませてくれます。
特に本マグロの大トロでは、脂を切りながらも、マグロの長い余韻を残してくれました。
軽いビンチョウから、キハダ、本マグロの赤身、中トロ、大トロ、そして脂の乗ったのどぐろまで。
一本のロゼワインで、これだけ幅広い寿司を楽しめることは、大きな魅力です。
料理とお酒の組み合わせも、一期一会
今回の組み合わせを、まったく同じ形でもう一度再現できるかと考えると、簡単ではないかもしれません。
クレール2023は生産本数の少ないワインで、ワイナリーの方の話では、今後も同じように造られるかは分からないとのことでした。
今回の赤シャリとマグロの企画も、次に同じ内容で開催される保証はありません。
もちろん、似たような寿司とロゼワインを合わせることはできます。
しかし、この日に、このワインを開け、この寿司と合わせて感じた味わいは、一度きりです。
人との出会いが一期一会であるように、ワインとの出会いも、料理との組み合わせも一期一会なのだと思います。
私は、新しい場所へ行ったり、誰かと出会ったり、今まで知らなかったものを味わったりすることが好きです。
そうした体験を重ねることが、人生の楽しみだと思っています。
期間限定という言葉にまんまと釣られたとしても、今回の機会を逃さず楽しめてよかった。
食べ終えた後に残ったのは、そんな気持ちでした。
身近な回転寿司でも、ワインを一本合わせ、魚種や部位の違いを意識して味わえば、いつもの食事が少し違って見えてきます。
日本の食文化を、ワインを通してもう一度味わってみる。
今回の食べ比べは、その面白さを改めて感じさせてくれる体験になりました。


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